「徹底的に現場をデータ化する」。
株式会社大興電気様の取り組みが生み出す、その効果とは?

2022年2月28日(月)と3月17日(木)に株式会社 大興電気様(京都府伏見区)の取り組みを取材した。
本記事では、同社の取り組みや新技術を導入したその背景をお伝えする。


株式会社大興電気様は1964年に創業した電気工事を主軸とする企業だ。
大手私鉄会社・大手電力会社・京都市という安定した顧客を獲得していること、さらに電鉄関連工事にも豊富なノウハウを蓄積していることが強みである。

安定的な顧客獲得の背景には研鑽され続ける技術力や、施工結果への信頼があると考えられるだろう。
同社は電気設備工事において、ドローンでの空撮や3次元技術を取り入れる。
その新技術を磨き続け、指揮をとっているのが同社取締役統括部長の木下氏だ。

——そんな同社だが、見据えている未来は自社の発展だけではない。
「今は大丈夫だが、これから起こるかもしれない課題」に太刀打ちすべく動き続けるその動力は一体何だろうか。

株式会社大興電気 取締役統括部長 木下氏。 同社のICT化を計画・推進する。

▲株式会社大興電気 取締役統括部長 木下氏。
同社のICT化を計画・推進する。

2018年の台風被害を見て、ドローンの導入を決断。

株式会社大興電気様の最初に導入した新技術はドローンだった。
きっかけは、2018年に発生した台風21号の被害を目の当たりにしたこと。
取引先である叡山電鉄株式会社様の沿線が大きな被害に見舞われたのだ。
倒木が激しく、現場の奥まで進むことが難しいことからドローンの必要性を感じたという。

台風被害の様子。

▲台風被害の様子。

高所での作業が行われる。

▲高所での作業が行われる。

電線上にある部品の点検が必要だ。

▲電線上にある部品の点検が必要だ。

軌陸車。線路の上を走る。

▲軌陸車。線路の上を走る。

新技術運用の3つの目的。

2018年の台風被害をきっかけに新技術の導入を決断した株式会社大興電気様だが、その新技術運用のロードマップの構想はそれ以前から練られていたという。 そこに設定されていたのが「安全性の向上」「効率性の向上」「災害時の対応力向上」という3つの目的である。 また、それらに加えて同社は「汎用性の高さ」という点にも着目して製品選定を行った。

最初のドローン導入に際しては「日頃の自分たちの業務でも使えるか?」という点を重点的に考えたと話す木下氏。
「日常で使える」「災害時にも使える」ということ、つまり汎用性を優先的に思慮し導入を決断した。
木下氏は「汎用性の高い製品こそゴールの設定をする方が良い」と話す。
汎用性が高いということは「自由度が高い」と言い換えることが出来るだろう。自由度が高い分、目的を明確化しないと導入の効果を十分に発揮することが難しい場合があるのだ。 だからこそ「何をしたいか」という目的を明瞭にすることが、製品活用のためのポイントの1つになる。

――現在では通常の業務内での「腐食はないか?」「電気が通っているか?」「設備に割れがないか?」といった情報をドローンで取得する。 また併せて、DJI「Matrice 300」「Zenmuse L1」の運用を開始し、現場の即時点群化も進めているという。 L1の地表面もしっかりと計測できることと圧倒的な計測時間の短さが、業務の幅を伸長させているようだ。 人の目で確認していた情報や時間を掛けて取得していた情報を確実にデータ化しており、 ドローンの運用レベルの高さが分かる。

現在ではDJI「Matrice 300」「Zenmuse L1」も運用している。

▲現在ではDJI「Matrice 300」「Zenmuse L1」も運用している。

現場をDJI「Zenmuse L1」で点群化し、情報共有を行う。

▲現場をDJI「Zenmuse L1」で点群化し、情報共有を行う。

「もっと簡単に出来ると思っていました。」

ドローン導入をフックに、自社の技術革新へと動き始めた株式会社大興電気様。
だが、最初に導入したドローンではどんな工夫を凝らしても欲しい情報を取得することが難しかった。
――電気設備工事を主軸とする同社にとって重要なことは電気設備のデータを取得することであるが、 一般的にドローンが活用されている土木関連の施設と比べて、電気設備は複雑であるためデータの取得に苦労したという。

このまま新技術の活用を止めようと思わなかったかと尋ねると、 木下氏は「何度も止めようと思いました。」と笑いながら話した。しかし、「これまで掛けてきた時間やコストを考えると止められなかった。」という。

――同社の主力事業である線路上の電気設備工事は非常にセンシティブだ。
滞りなく施工を完了させることが当たり前であり、もしそれが出来なかった時には電車の運行が止まり、社会的に大きな影響をもたらす。 木下氏は自社の仕事を「公共性が高くて面白いが、その反面でうまくいかなかった時のリスクが大きい。」と表現している。社会への影響力が大きな仕事だからこそ、リスクヘッジのために技術革新を行う同社。 これまでの施工方法に固執しない柔軟な姿勢がそこにはあった。

当時導入したドローンでは取得できなかった情報を「RTC360」でデータ化。

同社は次に地上型レーザースキャナであるライカ「RTC360」をグループ会社である株式会社東陽電設工業様と協業で取り入れた。それにより、同社の新技術活用への速度が上がっていくこととなった。
RTC360では座標も活用し、現況の点群化だけでなく施工後のイメージを3Dでモデリングすることで 工事内容の更なる可視化へと繋げているという。
計測したい箇所に合わせて製品を使い分ける同社だが、 それは「何をどうしたいか」という目的を確立させているからこそ製品の特徴が分かるのだろう。

ライカ「RTC360」で計測したデータ。

▲ライカ「RTC360」で計測したデータ。

――徹底的なデータ化が、現場管理を円滑にした。

2018年の台風被害から現在までの変遷を叡山電鉄株式会社様の田村氏から伺うことも出来た。その話を通して、株式会社大興電気様のその徹底的な現場のデータ化が効果を発揮していることを感じることが出来る。

2018年に台風被害を受けた叡山電鉄沿線は、2年後の2020年にも豪雨による甚大な被害を受けた。 公官庁や民間企業が協同で連日復旧作業を行い、全線復旧できたのは約1年2カ月後。 結果として災害被害にあった状況をリアルタイムに発表しながら、当初予定していた工期を約6カ月短縮することが出来たという。

――最初の台風被害で培った「現場をデータ化する」というノウハウが活かされたのだ。 復旧作業は様々な企業や公官庁が関わり合いながら進む。 株式会社大興電気様が定期的に現場の状況を写真や点群でデータ化し共有することで、工程管理の一元化へと繋がったという。 また、その情報共有方法にも工夫は凝らされた。

クラウドやビューアーを利用するだけではなく、データを動画にして動画のリンクアドレスにアクセスするだけで、情報共有が出来るようにフローを整えたのだ。株式会社大興電気様がひと手間加えることで個々人のIT技術に関係なく、叡山電鉄株式会社様をはじめ、多くの関係者とムラのない情報共有が可能となった。
そして、その情報によって工程の順序調整や状況に適した部材選定が可能となり、工期6カ月短縮という結果を生み出したのだ。 株式会社大興電気様が掲げている「災害時の対応力向上」という目的が他社をも巻き込み、達成されたのだと強く感じられる。

ドローンでの計測後、すぐに解析を進める木下氏。

▲ドローンでの計測後、すぐに解析を進める木下氏。

3次元技術導入は「いつかは自分たちのためになる」という考え。

木下氏は、業務のICT化が人口減少に付随する課題を解消すると考えている。中でも繰り返されていたのが「事業承継」という言葉だ。 もちろん、現状維持のフローでも作業を行うことは出来る。

――そう、「今」は問題ないのだ。 同氏は新技術導入が「必ずいつかは自分たちのためになる」という信念を持ち、リーダーシップを発揮する。株式会社大興電気様では自然にそれが根付き、伝播していったという。
あくまで自分たちの使命は「施工管理の精度をあげること」としているが、後継者不足のような人口減少に伴う課題解決に自分たちの仕事道具が活かされればとも考える。

「今までと同じやり方を続けていくと、いつかひずみが出てくると思うんです。」と話す同氏。
現場をデータ化し、それがさらにノウハウとして残り、企業価値として残る。
このサイクルが1つの大きなのビジネスモデルにも見えた。

資材について木下氏より説明を受ける神戸清光の営業担当者。

▲資材について木下氏より説明を受ける神戸清光の営業担当者。

木下氏の「事業継承」への想い。

株式会社大興電気様は電気工事を主軸とする企業だが、 しかしながら、その言葉だけで説明するには足りないような大きさを感じた。

同社の様々な取り組みを知ることが出来たが、それらは決して部分的ではなく、根底に同じエッセンスが存在しているように思われる。感覚的に言えば「優しさ」のように感じるし、言葉に当てはめるのであれば「社会貢献」だ。

また「目的を明確に設定する」ということが製品活用の近道であり、大局的には自社の価値創造になるのだと改めて本取材を通して認識を深めることが出来た。

神戸清光でも、営業担当がユーザーの目的・ゴールを考え合わせて製品の提案を行う。
是非お気軽にご相談いただきたい。

(株)神戸清光 広報担当 松本葵

株式会社大興電気 様

【所在地】〒601-1346 京都市伏見区醍醐東合場町39番地
【電話番号】075-571-7733
【HP】http://kktaiko.com/