3月吉日、長野県たつのパークホテル様全面協力のもと全国から測量器販売会社様が集結し、
様々なメーカーの3Dレーザースキャナーで点群比較テストを行う『春の点群祭り2025』が開催されました。
我が神戸清光は、近年注目が高まってきているハンディレーザースキャナーを主力機種として
各社との比較検証実験に参加してきましたので、その様子をレポートさせていただきます。
前回公開した点群比較レポートの反響を鑑みて、今回は福井コンピュータ点群ソフト
『TREND POINT』のスライス機能を使用し、点群断面検証も行ってみたいと思います。
福井コンピュータ『TREND POINT』の製品紹介ページはコチラ
http://www.kobeseiko.co.jp/trend-point.html
点群祭り当日は現在注目のトレンド機種が軒を連ねる中、
今回の比較レポートでは、弊社取り扱い製品の中でも主力製品である4機種をピックアップしました。
以下、比較機種のご紹介です。
検証を行った現場はたつのパークホテル敷地内周辺、
全長約250m、15か所にコントロールポイントを設け、計測を開始しました。
まずは各機種の点群を比較してみましょう。
【1】Leica BLK360 G2
前回の点群比較レポートにも登場したLeica BLK360 G2。
地上型レーザースキャナーの中でも1器械点あたり最短20秒という驚異的なスキャン速度と僅か850g(バッテリー含む)という機動力の高さが魅力の当機種。
さらにLeica独自のビジュアルスラム機能(VIS)を有しており、専用のフィールドコントローラーアプリ『CYCLONE FIELD』を使って計測と同時に自動でレジストレーションまでが現場で完結できる。
内業に掛かる時間と労力を圧倒的に短縮できます。
地上型のクオリティを損なわない高い精度と、ご覧の通り地上のトレースにも充分すぎる視覚性が得られる印象。
Leicaの地上型レーザーの中でも全体的にRGB情報が明るく、そちらも視覚性の高さに影響しているように思います。
導入コスト面も含めて地上型レーザースキャナーの入門機としても圧倒的な人気を誇る機種となります。
【2】Leica RTC360
弊社点群比較レポートでは今回初登場となるLeica RTC360。
Leicaが誇る言わずと知れた上級モデルですが、はじめに留意すべきは当機種が1000万円クラスの価格帯かつ地上型レーザースキャナーという条件を踏まえ、他機種との比較をする必要があるという点です。
現在トレンドとなっているSLAM型ハンディレーザースキャナーではまだまだ到達できない1.9mm@10mというミリ単位の精度をRTCなら実現できます。
先程BLK360 G2でご紹介したLeica独自のビジュアルスラム(VIS)も搭載しており、BLK360と同様に自動でレジストレーションが完了できる。
点群については極めてノイズが少ない事により厚みも薄く、点群同士が一定に揃っており視覚性も非常に高い印象です。
【3】XGRIDS社Lixel L2pro
昨年から業界内でも注目度が高まってきたXGRIDS社のSLAM型ハンディレーザースキャナー。
これまでにハンディレーザースキャナーの点群を見てきた方の多くは、まずパッとこの点群を見た瞬間、
このクオリティの高さに驚きの声が上がります。
実際に様々な測量機販売会社様やメーカー様が持ち寄った多数機種を比較した結果から見て、
やはり会場内でも当機種への評価が一際高かった印象でした。
縁石の角のエッジ感や側溝の境界線などもくっきりシャープに見渡せるレベルで点群密度も充分な濃さ。
当機種についてはもう一つ上のグレードで120m/32チャンネル(640,000点/秒)の高密度点群モデルも存在しますが、
こちらの120m/16チャンネルモデル(320,000点/秒)でも充分な情報が得られる印象です。
なんとこの120m/16モデルについては400万台からの導入が可能!
市場の価格相場から相対的に見て、ここまでのバリューを誇る機種はまだ見当たりません。
【4】XGRIDS社Lixel K1
上記に登場したXGRIDS社の下位モデルとなるLixel Kity K1。
回転式のフルドーム型LiDARを搭載したLixeiL2proとは違い半球状のLiDARを搭載したモデルという事もあり、点群の濃さについては上位機種との差が表れた形となりましたが、なんとこちらの機種においてはL2proの半分の価格の200万円台から購入が可能。
何といっても僅か1kgという片手サイズの軽さとコンパクトさが魅力の製品で、まるでソフトクリームでも持っているかのような様相で歩き回るだけで、誰でも簡単に2~3cm精度の3次元点群を取得できるのが特徴。
例えばドローンや地上型測量器の計測が困難な山間部のスキャンなど、これまでに入り込みづらかった場所を補助的に補うなどの活用も可能になります。
地上型レーザースキャナーでは2時間程度を要するところ、僅か20分で計測が完了しました。
この圧倒的な計測時間の短縮がハンディレーザースキャナー最大のメリットだと言えます。
さて今回のレポートの本題ですが、福井コンピュータ『TREND-POINT』の断面スライスの機能を使い各機種の断面を見てみましょう。
Scene1:円柱状の柱がある建物(縦断面)
エリア周辺の建物を紫のラインで縦にスライスしてみました。
各機種の点群を分かりやすく単色に色分けして並べてみます。
白→【1】Leica BLK360 G2
緑→【2】Leica RTC360
赤→【3】XGRIDS L2pro(120/16)
黄→【4】XGRDIS Lixel kity K1
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それでは、一つづつ断面を見ながらレビューしてみましょう。
まずは【1】Leica BLK360 G2(白)
断面で見ても非常に安定感がありくっきりとした印象。敢えてノイズが出やすい
円柱状の柱の断面をスライスしてみましたが、しっかりと輪郭を捉えており流石の
クオリティといった印象です。
地上型の精度を保ちつつ、機動力とコストパフォーマンスの魅力が最大限実感できる一台でしょう。
まずは当機種の点群を基準に他機種を比較するのが良いかと思われます。
【2】Leica RTC360(緑)
今回の4機種の中で最もハイエンドであるフラッグシップモデル。
同メーカーであるBLK360 G2と比較してもやはり歴然とした差が現れました。
全体的に厚みが少なく非常にシャープで見やすい印象で、特に先程取り上げた4本の円柱の柱
部分は際立った差が見えます。
強調すべきポイントは、この点群が決して”薄い”わけではなく、”点群の厚みがなく整っている”という部分です。
性能が良いレーザーとは何か?という問いに対して様々な観点がある中で、
『いかにノイズが出にくいレーザーかどうか』というLeicaのこだわりが大いに感じられたデータでした。
【3】XGRIDS L2pro(120/16)(赤)
さて、注目のハンディ型レーザースキャナー。筆者としてもこの断面のクオリティにはただただ
驚きでした。
点群の厚みについてはもはや地上型のBLK360 G2と比較してもL2proに軍配が上がる
レベルではないでしょうか。
全体的にRTC360に近い点群のまとまり感と、円柱上の柱と思えないノイズの少なさが目立ちます。
さらにこれはSLAM型レーザースキャナーの強みになる部分だと思いますが、
対象物に対して歩き回りながら色んな角度からレーザーが当たって点群が生成される為、
立体的な構造物でもムラが少ない点群が取得できているように思います。
【4】XGRDIS Lixel kity K1(黄)
上記XGRIDS社ハンディレーザースキャナーの下位機種であるLixel kity K1。
はじめにお伝えした通り、ノイズが出やすい丸い柱の部分を敢えてピックアップしただけのことはあり、
ここではその差が表れた形となりました。
むしろ一般的なハンディレーザースキャナーの点群では良く見られるようなノイズで、その中でも当機種は対象物の輪郭もしっかりと捉えられている方ではないかと思います。
相対的な観点でジャッジするとすれば、当機種が劣っているというよりは【3】のLixel L2proが相当優れているという結論が正しい見解となるでしょう。
個人的には価格差に応じて相応に視覚性の差が見えた部分にリアリティを感じました。
Scene2:機関車(横断面)
こちらは敷地内に展示してある機関車の周辺をスキャン。
中央部分で横スライスして断面をそれぞれ見てみます。
【1】Leica BLK360 G2(白)
【2】Leica RTC360(緑)
【3】XGRIDS L2pro(120/16)(赤)
【4】XGRDIS Lixel kity K1(黄)
4機種まとめて並べてみました。
黒い筐体でなおかつ複雑な形状が故、レーザースキャナーの性能差が見える想定をしておりましたがここは良い意味で意外な結果に。
点群の厚み自体はやはり【2】のRTC360と【3】Lixel L2proのクオリティの高さが際立ちますが、このシーンでは
【4】Lixei kity K1のノイズもかなり少ない結果になりました。
このエリアについては比較的重点的にスキャンした箇所であることも大いに影響していると感じますね。
以上、
今回の検証では、福井コンピュータ『TREND POINT』を使った点群断面検証を行ってみました。
次回は断面以外にも実際に検証点を使った精度比較についてもレポートできればと考えております。
なお、今回使用した4製品についてもデモや商談などのご要望を承っておりますのでお気軽に当社ホームページよりお問合せください。
それではまた!
株式会社神戸清光レポート担当:松本